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bluesoyaji’s blog

読書、化石採集、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、文学、音楽、学び方などを書いています。少しでも高校生や受験生のみなさんの役に立てばうれしいです。

2017年 広島大学 入試問題 国語 「ブラジルおじいの酒」目取真俊 を読んで考えた

2017年 広島大学 入試問題 国語 小説

「ブラジルおじいの酒」目取真俊 

 

河合塾のサイト

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/17/hr1.html

 

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近所に一人で住む「おじい」と小学4年生の「ぼく」との交流が描かれている。
初めは友だちと「おじい」の畑から果物を盗むなどのいたずらをしていた「ぼく」が、あるできごとをきっかけにおじいの家に出入りするようになる。

若いときにブラジルに渡り、壮絶な体験をしたらしいおじいは、ぼくにさまざまな話を語る。


問題文は、おじいが瓶から取り出した泡盛をぼくに勧める場面である。
おじいとその父親の約束の話があり、ブラジルから帰郷したおじいが家族の全滅を知る話があり、瓶の由来が語られる。
おじいとぼくの話のなかに、おじいと父親の話が挿入されている。

 

おじいの語りから、沖縄戦の凄惨さが伝わる。おじいの生まれ育った集落が米軍基地になってしまっている。そして、洞窟(がま)の存在。

 

この問題文も、大阪大学の入試問題「魚雷艇学生」と同様、戦争のことを忘れるなという出題者のねらいがあるのだろう。


受験生のみなさんは、中学や高校の修学旅行で沖縄へ行き、平和学習をした人もいるでしょう。沖縄戦を学んだ人も、知らない人も、この「ブラジルおじいの酒」を読むことを通して、沖縄の問題に触れることができる。
学習のきっかけになる。そういう意味でも貴重な出題と言える。

 

作者の目取真俊氏は、「水滴」で芥川賞を受賞し、活躍されている沖縄出身の作家である。直接は沖縄戦を体験していない世代だが、おそらく、幼い頃から親や周囲の人の語る沖縄戦の話をたくさん聞き取ってきたことだろう。


今後、戦争を直接経験した世代が少なくなることで、戦争の残酷さ、悲惨さが薄められるようなことがあってはいけない。私も含め、戦争を体験していない世代が、語り継ぐ、あるいは、記録や文学作品を通して戦争の実態を知ることが求められる。

こんな時代だからこそ、大学入試の問題として戦争を扱った文章を読ませることは、意義のあることだ。

 

ユリイカ」2001年8月号 特集<沖縄>から に今福龍太「混合体としての沖縄の叡智 目取真俊『ブラジルおじいの酒』を読む」という論考が掲載されています。


文化人類学の立場からの詳細な考察で、参考になりました。一部、引用します。


目取真俊の作品では、この物語に限らず、時間と場所を異にするさまざまな要素が一つの想像力のなかで非常に見事に融合されていて、「現在の沖縄」の一つの写し絵が形作られている。

 

目取真俊の作品のおすすめです。 


水滴 (文春文庫) 

 

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魂込め(まぶいぐみ)

「ブラジルおじいの酒」所収

 

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群蝶の木

 

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 眼の奥の森