bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

国公立大学二次試験 山本周五郎の小説が金沢大学の入試に出題されていたので読んでみた 2017年 金沢大学 人間社会学域 国語

 

2017年 金沢大学 人間社会学域 入学試験問題 国語

「民衆という幻像」渡辺京二 筑摩書房

 

山本周五郎の小説を取り上げ、義理を論じた文章。周五郎を題材にする評論は珍しいので、読んでみました。

 

 http://nyushi.nikkei.co.jp/honshi/17/kn1-31p.pdf

 

問題文の要旨

 

周五郎の小説の登場人物は、習俗としての義理人情に鋭い嫌悪と反発
「釣忍」の定次郎、おはん
義理人情的習俗にからまれて心にもない生きかたをしなければならないのがいや
 |
「信頼に対する呼応」
おはんの好意と信頼に応える定次郎ー習俗的規範としての義理よりも本質的なまもるべき義理
民衆ー人と人とのあいだに本質的な人倫の意味を保証する最低限の好意的基準

誠、実、心中立て
「柳橋物語」
 |
民衆が抱きつづけてきた義理という夢の実体を明らかにしている
義理とはー自分の存在の根拠が深いところで照らし出されるとき成立する感覚
ある普遍的なものの触知感
 |
人生の功利的要素を拒否し、切り捨てることによってしか成立しない
義理は何に向けられるのか→あくまで特定の人間=つねにだれかへの義理、個別主義の立場に立つ倫理
 |
人と人とのあいだに成立する主情的な感覚=人間の共同性
普遍的なものー自他の共同性ー見果てぬ夢
人間の共同的な基礎の不在という事実→義理人情=幻の形ーメルヘン

 

 

最後の段落で、論理が飛躍している。
いきなり、義理人情は共同性への見果てぬ夢だという事実であると断定している。続いて共同的な基礎の不在という事実と繰り返す。

入試問題なので、文章の切り取られた方によって読みが変わってしまうことがある。

 

著者は、山本周五郎の小説を素材として、そこから思想なり、日本人の特質なりを抽出し分析している。


本来、小説は文芸作品として鑑賞するものだ。

 

小説をどう読むかは読者にゆだねられるが、周五郎の作品を客観的に、一つの完結した世界として読むべきであろう。

 

 


民衆という幻像: 渡辺京二コレクション2 民衆論 (渡辺京二コレクション(全2巻)) 

 

山本周五郎の作品のおすすめです。

 

柳橋物語・むかしも今も (新潮文庫) 

 

さぶ (新潮文庫)  

 

小説日本婦道記 (新潮文庫) 

 

青べか物語 (新潮文庫)  

 未読ですが、面白そう

 

山本周五郎で生きる悦びを知る (PHP新書) 

 

受験生と企業の人事担当者は、これを見よ!本当の大学ブランド力ランキングはこれだ!

 

日経BPコンサルティング

「大学ブランド・イメージ調査 2016-2017 近畿編」

 

対象大学は主要66校、調査期間は2016年8月1~31日、有効回答はビジネスパーソン4,291人

 

近畿地方の主要大学における「大学ブランド力」ランキング

http://news.mynavi.jp/news/2016/11/30/425/

 

このランキングは、高校でのイメージとは異なる部分がかなりあります。

 

あくまで私見ですが、高校で10年以上進路指導の仕事に携わっている経験から、何点か述べたいと思います。

 

まずは上位について、
1位 京都大学、2位 大阪大学、これは間違いないです。しかし、3位は神戸大学と思います。神戸大が6位とはありえません。

 

大阪も兵庫も、学力の高い受験生は、京大、阪大、神大の順で受験先を選びます。


学力上位の受験生にとって、同志社大は、あくまで併願校です。
滑り止め、あるいは国公立の二次試験対策で、記述がある同志社の入試を、慣れのために受ける。そういうことが多く行われています。
だからそんな受験生は、同志社大学に合格しても、入学しません。合格者のうち、入学の手続きをした率を見れば分かります。


では同志社大は、4位かと言えば、それも違います。5位です。
4位は大阪市立大学でしょう。学力上位の受験生にとって、京大、阪大が届かなければ、神戸大か、大阪市大かなのです。


大阪市立大学には、京都大、大阪大を目指していた学生が大勢います。残念ながら第一志望は受からなかった、でも、当然、学生の能力は非常に高いです。
大阪市大が9位なんて、ありえません。

 

私大の人気で言うと、同志社大、立命館大、関西大、近畿大、関西学院大の順が妥当でしょう。


同志社大は関関同立の中で、やはり頭一つ抜け出しています。


近畿大は、今年も全国一、受験生を集めました。圧倒的人気ですが、関西大と近畿大の両方に合格した場合、関西大を選ぶ人が多いのが現状です。


関西学院大学は、かつての人気に陰りがあり、近畿大のような勢いが感じられません。大阪の受験生には関西大の方が人気です。

 

その他に私大では、大阪経済大学が20位までに入るべき大学としてあげられます。立地の良さ、近大より少し入りやすいというポジションで受験生の人気が高いです。今や近畿大学は、関関同立に合格する学力がないと受かりません。

大経大は学費が安いことでも人気があります。

 

同志社女子大、奈良女子大、武庫川女子大の順位も低すぎて、実態を反映していません。


学力で言えば、奈良女子大は、大阪市大と変わらないです。同志社女子大も、関関同立クラスと変わらない。武庫川女子大も人気が高いです。


女子大の順位に関しては、日経BPの調査対象が男性サラリーマン中心だったので、女子大のことがわからず、このような結果になったのではないかと考えられます。

整理すると、こうなります。


1位 京都大学
2位 大阪大学
3位 神戸大学
4位 大阪市立大学
5位 同志社大学
6位 奈良女子大学
7位 大阪府立大学
8位 立命館大学
9位 関西大学
10位 近畿大学

 

企業の人事担当者が、日経のランキングを見て、万が一にも、うのみにされると困りますので、この順位を参考にしてください。

 

サン=テグジュペリの最期について書かれた本 「星の王子さまが眠る海」を紹介します

 

国立大学の医学部入試にも出題された「夜間飛行」

その作者のサン=テグジュペリは、第二次世界大戦中の1944年7月31日、偵察機で任務に出撃し、帰りませんでした。


その死は謎のままで、ドイツ軍の戦闘機に撃墜された、故障のため墜落した、急病のせいだなど、諸説があります。


「星の王子さま」は、故郷の星に帰るため、自分を毒ヘビに咬ませます。衝撃的な死ですが、作者の死は、それ以上の衝撃です。
長い間、サン=テグジュペリの最期は謎でしたが、この本では、謎の一部が解明されます。


サン=テグジュペリは、星の王子さまになったのではなく、確実に死んでいたという事実が判明します。彼のファンとしては認めたくない事実です。


ブレスレットの発見とそれに続く搭乗機の確認。
次々と判明する事実に、読んでいて興奮します。

 

サン=テグジュペリを知らなかった人は、まずはこれから読むことをお勧めします。
有名な作品のわりに、意外と読んでいない人が多い名著です。

 

星の王子さま (新潮文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/4102122044/ref=cm_sw_r_cp_api_G.8XybHQCFRW0

 

サン=テグジュペリをより詳しく知りたい人は、これをお勧めします。

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星の王子さまの眠る海
ソニーマガジンズ
http://amzn.to/2q1QhhQ

近畿大学の入試問題がニュースになっていたので、考えた

 

 

受験生の2人に1人が利用する圧倒的なわかりやすさ!まずは無料でお試し。

 

近畿大学の17年度入試問題が波紋

安倍政権を痛烈に批判 - ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/12792090/

 

近畿大学が安倍政権を批判した文章を入試問題に出題したとして騒がれているそうです。

 

私はまだ問題を見ていないので、詳しいことはわかりませんが、いくつか考えたことを書きます。

 

近畿大学は、はっきりしたことを大事にしていると思います。

 

評論文で、何を言いたいのか、さっぱりわからないような文章を平気で出題する大学がある中、近畿大学は、読めば理解できる文章を選んでいるということ。

 

安倍政権を批判した内容だからけしからんではないのです。右や左は関係なし。

 

読んでもわからないような文章を出さずに、ちゃんと読めば、読み取れるものを出題する。受験生に対して、誠実な態度だと言えます。

 

また、こんなのを出題すれば、時の政権から睨まれて不利益をこうむる、なんて近畿大学は考えていません。おそらくですが。

 

何と言っても、今年も日本で一番たくさんの受験生を集めたのが近畿大学です。

 

圧倒的に受験生から支持されているのです。

 

補助金を削除なんて、心配しなくてもいいんです。

文科省の人が忖度して…など怖くないのです。

 

2016年の大学入試で、東京大学と大阪大学が「反知性主義」を批判した文章を出題しました。おそらく近畿大学の問題作成委員の先生は、これを読んでいたと思います。

 

東京大学と大阪大学は、さすがに安倍政権とは書いていない。でも、近畿大学は、はっきりとわかる文章を出題した、それだけです。

 

近畿大学は、マグロ大学と呼ばれることがありますが、関西では、受験生あこがれの大学なのです。

 

東京の人は、その辺がちょっとわかりにくいかもしれません。

関西ではトップレベルの関関同立を合格するくらいの高い学力がないと合格できません。

 

今回の出題は、話題性も含めて、近畿大学の狙いがあるのは間違いないでしょう。

 

近畿大学、いや、関西人のパワーおそるべしです。

 

 

化石採集 徳島県上勝町で貝の化石を見つけました

 

 


徳島県上勝町で化石採集しました。

 

参考にしたのは、徳島県 地学のガイド コロナ社

 

徳島県 地学のガイド―徳島県の地質とそのおいたち (地学のガイドシリーズ) 

掲載されている上勝町の正木ダムコースと月ヶ谷コースに行ってみました。

 

月ヶ谷コースは、蛇紋岩の路頭を通り、せまい林道をひたすら車で上っていきました。途中で本に紹介されているポイントを探索しましたが、化石は全く発見できません。

とうとう月ヶ谷の集落の手前まで行きました。林道沿いの崖は泥岩がありますが、化石は見つかりません。

あきらめて引き返しました。


本の出版が2001年なので、情報としてはもう古いのでしょう。でも現地は山深くて誰とも会わず、自然を満喫できました。

 

次に、正木ダムコースへ行きました。ここは以前にも来ましたが、ダム沿いの道では全く化石を見ることができません。

地学ガイドには、たくさんの採集ポイントが紹介されていますが、残念です。

 

次に、柳谷集落を目指して、山を登っていきます。道は舗装されていて車でも通りやすいです。川沿いに停めて、転石を見ながら進みます。集落の途中で、これ以上は化石採集地はないと判断して引き返します。


最後に見てみた川の転石に貝の化石がありました。ハンマーで割ってみると、大きめの貝化石が入っていました。やれやれ、やっと見つけてほっとしました。

 

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20cmほどの石を割ったものです。

 

今回は、残念ながらトリゴニアの化石は見つかりませんでした。
いつかは上勝町の名物、トリゴニア化石を見つけたいです。

 

ネットでは化石が見つかる場所の情報がありません。
今度は現地の方に聞いてみようと思います。

 

何度か訪れた上勝町。いろどりビジネスで全国的に有名ですが、自然の景色がたいへん魅力的です。そこに中生代白亜紀の化石が眠っています。

 

 

国公立大学二次試験 山形大学医学部 2015年 大学入試問題 「夜間飛行」サン=テグジュペリ

 

サン=テグジュペリの「夜間飛行」は、1931年にパリで出版された小説である。

 

山形大学医学部の2015年大学入試 国語の問題で「夜間飛行」が出題されたので、考えてみた。

 

なお、問題文は、新潮文庫 堀口大学訳の文章。おそらく著作権の関係でネットには掲載されていない。
私が確認したのは、旺文社 「2016 全国大学入試問題正解」という問題集である。

 

新訳は、光文社古典新訳文庫、二木麻里訳で出ている。

 

夜間飛行 (新潮文庫) 

 

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫) 


サン=テグジュペリの生涯 


「サン=テグジュペリの生涯」ステイシー・シフ著 新潮社 より、問題文の参考になる箇所を引用する。

 

一種の叙情性をすっかり捨ててしまうことはできなかったが、「夜間飛行」はそれでもさわやかに引き締まった作品に仕上がっている。作品の広がりという点でも優れ、ヘミングウェイの「老人と海」なみに自然との闘いを描いているのだ。

この作品では、三機の郵便飛行機が暗い夜空を飛んでいる。一機はパタゴニアから北上、一機はチリから東へ、もう一機はパラグアイから南へと、三機ともブエノス・アイレスを目指している。そこでは、ヨーロッパ路線の操縦士が真夜中に東へ飛び立とうと待っていた。だが到着したのは二機だけ。ヨーロッパ便は予定通り出発する。その便に、操縦士もろとも猛烈なサイクロンに巻き込まれたパタゴニアからの郵便物は、積まれていなかった。

 

郵便路線の発達を、厳格そのもののリヴィエールという登場人物ほど注意ぶかく見守ってきた者はいない。リヴィエールの営業主任という肩書きはサン=テグジュペリ自身のそれと同じだが、人物そのものは1931年当時も今もディディエ・ドーラの伝説と重なり合っている。パタゴニアからの郵便とともに死ぬ悲運の飛行士ファビアンではなく、リヴィエールこそがこの小説のヒーローなのだ。

リヴィエールの使命は、彼が考えていたとおり、部下たちを鉄のように鍛えること、訓練すること、自らを克服して郵便輸送というとてつもない仕事に成功するよう仕向けることだった。

 

リヴィエール自身も「私は正しいのだろうか、それとも間違っているのか?まったくわからない。わかっているのは、私が厳しくしていれば、事故が少ないということだけだ」とつぶやいている。

 

この「老いた獅子」はある特別な形の勇気に深い敬意を抱いていた。大工の穏やかな幸せや、鉄床の前の鍛冶屋の勤勉さ、自分の土地がふたたび森におおわれないよう闘う庭師の粘り強さといったものに、何よりも敬服していたのだ。

 

彼の作品の中で、「夜間飛行」ほど巧みに行動と黙想を融合させえたものはない。

 

この物語は、電報や過去の追想、感情の描写といった一種の文学的モンタージュで、そのすべてが見る者に世界を、感情を交えず正確に、カメラが写し取ったような風景としてみせるのだ。より正確には、パイロットの目がとらえる風景である。

 

 

 

問題文は、パタゴニアからの飛行機を操縦するファビアンの機上での思索と、地上で飛行機の到着を待つリヴィエールの想いを描いている。

 

翻訳者、堀口大学の詩的な表現が、読解にやや困難さをもたらしている。

 

リヴィエールは、老職工長ルルーとの会話で、

この老人は、自分の過去の生活に対して、立派な板を一枚みがき上げた指物師の澄んだ満足「これで、仕上がった」というあの尊い気持ちを感じている。

と思う。

 

自分の重い職務に対し、強い責任感を負う人物の心情。これこそ医学者に求められる人間性の一面ではないか。リヴィエールの立場は、たしかに人の命を預かる医者と似ている。

 

山形大学が医学部受験生に、この「夜間飛行」を出題したねらいもそこにあるのだろう。

 

医学部を目指す受験生には、優秀な頭脳や豊富な知識だけでなく、仕事に対するリヴィエールのような態度も求められるのだ。

 

サン=テグジュペリの小説を読み、人生に思いを巡らすような人間性も当然求められているだろう。

 

サン=テグジュペリは1944年7月31日、偵察に出撃、地中海上空で消息を絶った。

 

1998年マルセイユ沖で、サン=テグジュペリの名前が刻まれたブレスレットがトロール船に引き上げられた。

 

2000年、その海域で、サン=テグジュペリ搭乗機が確認され、2003年引き上げられた。

 

 

「星の王子さま」で知られるサン=テグジュペリの「夜間飛行」も、ぜひ一読をお勧めします。

 

 

国公立大学二次試験 2016年 東京大学 文科 前期 大学入試問題 国語 「反知性主義者たちの肖像」内田樹

 

2016年 東京大学 文科 前期 国語

「反知性主義者たちの肖像」内田樹 

 

 河合塾のサイトで見ることができます。

東京大学

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/16/t01.html

 

反知性主義について、引用を用いながら筆者の考える知性との対比で、その定義を行い、批判した文章です。


対比や具体例を用いた文章なので、丁寧に読みとっていけば、筆者の主張の理解はできます。

あとは設問に対する解答の文章力が求められます。本文の要約や言い換えで、適切な字数に収める訓練が必要です。

 

内田樹先生といえば、西宮にある神戸女学院大学の先生を勤められた方。

最近では、マンガ「うつヌケ」田中圭一 角川書店 にもご自身の体験が取り上げられていて、興味深く拝見しました。

この内田先生の文書を出題したことは、東大生になる受験生に対し、反知性主義者になってはいけないというメッセージが込められているのではないでしょうか。


東大生は将来、為政者や権力者に近いところで働いたり、あるいは、権力を持つ立場になったりすることが多いので、ちゃんと考えていて欲しいというねらいがあると思われます。


「ひたむきな知的情熱」を持つのは、間違いなく東大生が一番ですから。

 

2015年9月には、現政権が「安保法案」を通しています。政権への批判が東大の先生方の中で強かったのだろうと思います。

 

大学入試に世間の動きが関係しないはずがありません。教科の受験勉強ばかりしていると、世間の動きに無関心になり、それこそ「反知性主義者」になる可能性ができてしまいます。

 

せめて東大に入る受験生には、社会の問題に対する鋭い意識を持っていて欲しいという大学教員の願いがあったのだと考えます。

 

この2016年には、東京大学だけでなく、大阪大学でも、「反知性主義、その世界的文脈と日本的特徴」白井聡 という文章が出題されています。

 

阪大もか!と驚きましたが、さらに大阪大学の国語の2問目は、なんと内田樹先生の「街場の戦争論」でした。

 

大阪大学
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/16/ha1.html


どれだけ「反知性主義」推し?「内田樹」推し!


旧帝大が2校もそろって、これですよ。
受験生なら、この問題は必ず読んでおきましょう。

 

出典を調べてみると、さらにおもしろいことがわかりました。


東大、阪大の「反知性主義」の文章は同じ本からの出題でした。


アマゾンのリンクを張っておくので、興味のある方は一読してみてください。

 

 

日本の反知性主義 (犀の教室)
晶文社
 

目次

反知性主義者たちの肖像 内田樹
反知性主義、その世界的文脈と日本的特徴白井聡
「反知性主義」について書くことが、なんだか「反知性主義」っぽくて
イヤだな、と思ったので、じゃあなにについて書けばいいのだろう、
と思って書いたこと 高橋源一郎
どんな兵器よりも破壊的なもの 赤坂真理
戦後70年の自虐と自慢 平川克美
いま日本で進行している階級的分断について 小田嶋隆
身体を通した直観知を 名越康文×内田樹
体験的「反知性主義」論 想田和弘
科学の進歩にともなう「反知性主義」 仲野徹
「摩擦」の意味──知性的であるということについて 鷲田清一

 

国公立大学二次試験の小論文は、「田村の小論文講義」がおすすめ

 

「田村の小論文講義1根底力養成篇 田村秀行 代々木ライブラリー

大学入試小論文の勉強におすすめです。


一巻の「根底力養成篇」は、テーマ型小論文の問題と文章題の要約問題が扱われています。


二巻の「応用力養成篇」では、実際の文章型の問題を扱っています。


残念ながら、どちらも現在は出版されていないので、手に入れたい方は古書で探して入手してください。


Amazonで調べてみると、第一巻は低料金でまだたくさんありました。

 

小論文が国公立大学の二次試験にあり、あまり対策ができていないという人は一巻を勉強してください。
ある程度小論文の勉強をしてきて書ける人は、二巻がおすすめです。

 

ここでは一巻の勉強の仕方を書きます。


「はしがき」と「本書の使用法」にあるように、問題(与えられた課題、テーマ)をまず自分で書いてみます。


次に、別綴じになった解答例を読み、本篇に戻って、著者の詳しい解説を読みます。

この解説をしっかりと読み、理解することが一番のポイントです。

途中に囲みで、

「『論文』なのだから、単に自分個人のことにとどまるような内容では失格である。」

「自ら提起した問題には明確な結論を与えて締めくくらなければならず、疑問形で終わるのは『論文』では最もいけない。」
といった注意点がたくさん掲載されています。

 

時間の無い人は、この囲みの内容だけでも一通り目を通しましょう。目次に「囲み事項索引」がつけられているので、大変使いやすいです。


国公立大学の小論文入試では、よく要約問題が出題されますが、この本ではその対策が詳しく解説されています。これは絶対におすすめです。


たとえば、要約の第一問の解説には、次のようなまとめの項目が載っています。


必要なところを残して、他を大きく切り捨てる思い切りが必要である。


数箇所を一つにまとめた表現を考えて字数を短くしなければならない。


本文の詳しい説明に代わる働きをする端的な接続詞を適宜用いて文意を明確にしなければならない。


長い表現も、工夫しだいで端的な表現に置き換えうる。


といった項目を確認するだけでも、要約問題に対処する方法が身につきます。

 

田村先生の問題集は、解説をじっくり読むことが求められます。

 

もし、この「小論文講義1」が難しく感じる人は、「やさしく語る小論文」を先に勉強することをおすすめします。


この本は、以前のブログ記事で紹介しています。参考にしてください。

 

http://bluesoyaji.hatenablog.com/entry/2017/02/04/180340

 

 

 

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田村の小論文講義―代々木ゼミ方式 (1) 

http://amzn.to/2q1UQbN



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田村の小論文講義―代々木ゼミ方式 (2) 

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国語教師が勧める小説 夏目漱石「夢十夜」と上田秋成「青頭巾」

 

 

 

夏目漱石「夢十夜」と上田秋成「青頭巾」


夏目漱石「夢十夜」第一夜

第一夜は、男が女との約束を待ち続ける話。百年待てば、会いに来るという女の言葉を信じて男は墓石の前で座り続けます。

 青空文庫から引用します。

 http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html

 

夏目漱石 夢十夜
第一夜

 こんな夢を見た。
 腕組をして枕元に坐すわっていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然云た。自分も確にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗き込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開けた。大きな潤のある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮に浮かんでいる。
 自分は透き徹るほど深く見えるこの黒眼の色沢を眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに枕の傍へ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。すると女は黒い眼を眠そうにみはったまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。
 じゃ、私の顔が見えるかいと一心に聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。自分は黙って、顔を枕から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。
 しばらくして、女がまたこう云った。
「死んだら、埋めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片を墓標に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また逢いに来ますから」
 自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
 自分は黙って首肯いた。女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。
「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
 自分はただ待っていると答えた。すると、黒い眸のなかに鮮に見えた自分の姿が、ぼうっと崩れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長い睫の間から涙が頬へ垂れた。――もう死んでいた。
 自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きな滑かな縁の鋭どい貝であった。土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿った土の匂もした。穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
 それから星の破片の落ちたのを拾って来て、かろく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちている間に、角が取れて滑かになったんだろうと思った。抱き上げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し暖くなった。
 自分は苔の上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石を眺めていた。そのうちに、女の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちて行った。一つと自分は勘定した。
 しばらくするとまた唐紅の天道がのそりと上って来た。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定した。
 自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り越して行った。それでも百年がまだ来ない。しまいには、苔の生えた丸い石を眺めて、自分は女に欺されたのではなかろうかと思い出した。
 すると石の下から斜に自分の方へ向いて青い茎が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺ぐ茎の頂に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹えるほど匂った。そこへ遥の上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動た。自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁に接吻した。自分が百合から顔を離す拍子に思ず、遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。

 

 

大変ロマンチックなお話です。

男が百年間、女を待ち続けるというこの設定は、上田秋成の「青頭巾」を連想させます。


「青頭巾」は、「雨月物語」所収の話です。

旅する僧が立ち寄った村で奇妙な話を耳にします。そして僧が訪れた荒れ寺で目にしたのは、愛欲にとりつかれて、死んだ最愛の男の子を食べてしまい、鬼と化した住職の姿です。

住職に「江月照松風吹 永夜清宵何所為」という句を授け、一年後、その寺を訪れると、まだ住職が小さな声で、二句を唱えています。

僧が一喝すると、あとには骨と住職が被っていた青頭巾のみが残っていたという話です。


漱石の夢十夜は、女との再会を待ち続ける男。青頭巾は、愛欲の妄執から脱するため、句を唱え続ける住職。どちらも愛が絡んでいて、執着する姿が共通しています。

男は百年立つ間、住職は悟りを得るまで、ともに座して待つのです。


夏目漱石は、上田秋成の青頭巾を読んで、夢十夜(第一夜)の着想を得たのではないでしょうか。


私は初めてこの第一夜を読んだとき、「これ青頭巾やん」と思いました。


漱石が上田秋成を読んでいたのかどうか知りませんが、もしそうだとすると、この第一夜は、漱石のロマンチックな部分がよくでている話だと思います。


ちなみに、青頭巾は、谷崎潤一郎が「芦刈」という小説の中で、「江月照松風吹 永夜清宵何所為」の句を取り入れています。興味のある方はぜひ一読してください。

 

青頭巾は、水木しげるのマンガでも読めます。

 

 まぼろし旅行記 (ちくま文庫―妖怪ワンダーランド)

 

改訂版 雨月物語―現代語訳付き (角川ソフィア文庫)  

 

国公立大学二次試験 2017年 広島大学 入試問題 国語 「ブラジルおじいの酒」目取真俊 を読んで考えた

 

 

2017年 広島大学 入試問題 国語 小説

「ブラジルおじいの酒」目取真俊 

 

河合塾のサイト

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/17/hr1.html

 

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近所に一人で住む「おじい」と小学4年生の「ぼく」との交流が描かれている。
初めは友だちと「おじい」の畑から果物を盗むなどのいたずらをしていた「ぼく」が、あるできごとをきっかけにおじいの家に出入りするようになる。

若いときにブラジルに渡り、壮絶な体験をしたらしいおじいは、ぼくにさまざまな話を語る。


問題文は、おじいが瓶から取り出した泡盛をぼくに勧める場面である。
おじいとその父親の約束の話があり、ブラジルから帰郷したおじいが家族の全滅を知る話があり、瓶の由来が語られる。
おじいとぼくの話のなかに、おじいと父親の話が挿入されている。

 

おじいの語りから、沖縄戦の凄惨さが伝わる。おじいの生まれ育った集落が米軍基地になってしまっている。そして、洞窟(がま)の存在。

 

この問題文も、大阪大学の入試問題「魚雷艇学生」と同様、戦争のことを忘れるなという出題者のねらいがあるのだろう。


受験生のみなさんは、中学や高校の修学旅行で沖縄へ行き、平和学習をした人もいるでしょう。沖縄戦を学んだ人も、知らない人も、この「ブラジルおじいの酒」を読むことを通して、沖縄の問題に触れることができる。
学習のきっかけになる。そういう意味でも貴重な出題と言える。

 

作者の目取真俊氏は、「水滴」で芥川賞を受賞し、活躍されている沖縄出身の作家である。直接は沖縄戦を体験していない世代だが、おそらく、幼い頃から親や周囲の人の語る沖縄戦の話をたくさん聞き取ってきたことだろう。


今後、戦争を直接経験した世代が少なくなることで、戦争の残酷さ、悲惨さが薄められるようなことがあってはいけない。私も含め、戦争を体験していない世代が、語り継ぐ、あるいは、記録や文学作品を通して戦争の実態を知ることが求められる。

こんな時代だからこそ、大学入試の問題として戦争を扱った文章を読ませることは、意義のあることだ。

 

「ユリイカ」2001年8月号 特集<沖縄>から に今福龍太「混合体としての沖縄の叡智 目取真俊『ブラジルおじいの酒』を読む」という論考が掲載されています。


文化人類学の立場からの詳細な考察で、参考になりました。一部、引用します。


目取真俊の作品では、この物語に限らず、時間と場所を異にするさまざまな要素が一つの想像力のなかで非常に見事に融合されていて、「現在の沖縄」の一つの写し絵が形作られている。

 

目取真俊の作品のおすすめです。 


水滴 (文春文庫) 

 

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魂込め(まぶいぐみ)

「ブラジルおじいの酒」所収

 

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群蝶の木

 

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 眼の奥の森